髪の毛のケアは、特に女性の方達にとって、日々心掛けていることですよね。
よくテレビのCMなどで、「髪の毛を生き返らせる」というキャッチフレーズを耳にすることはないでしょうか。
そもそもの話、髪の毛は生きているのでしょうか?
実は、髪の毛は「死んでる細胞」である、ということを聞いたことがある方もいると思います。
この記事では、そんな疑問から髪の毛のメカニズムをご説明していきます。
髪の毛は死んでる細胞の集まりなの?髪の毛が伸びる仕組みとは
結論から言えば、髪の毛は死んでる細胞が集まってできたものです。
というのも、髪は爪と同様に、皮膚の細胞が角化して(角質化)できたものだからです。
頭皮に埋もれた髪の毛の根元には、「毛乳頭」と「毛細胞」があります。
毛乳頭は、発毛、脱毛を司る司令塔であり、頭皮内部の毛細血管と繋がっています。
毛細血管から酸素や水分、ビタミンなどの栄養素や、脱毛を促すテストステロンという成分を受け取り、毛母細胞に、発毛、もしくは脱毛のシグナルを送ります。
例えば、髪の毛を作るように、毛母細胞に司令が出されれば、細胞分裂を活発に繰り返し、それが角質化しながら上に押し上げられていきます。
これが、髪の毛が伸びていく仕組みです。
もう少し分かりやすくご説明すると、人間の身体は、古いものから新しいものに入れ替わる「新陳代謝」が常に行われています。
それは皮膚も同様で、古くなった角質細胞(皮膚細胞)が垢となって剥離し、新たな角質細胞に生まれ変わります。
この皮膚表皮の「新陳代謝」を「ターンオーバー」と言います。
髪の毛は、いわば古くなった毛母細胞の角質のようなもので、ターンオーバーのサイクルによって押し上げられ、伸びていくのです。
つまり、髪の毛は死んだ細胞である一方で、頭皮は生きている細胞であると言えます。
これで、髪の毛の伸びる仕組みは分かりましたね。
では次に、髪の毛の成長サイクルについて、ご説明していきましょう。
髪の毛の成長サイクルを知ろう!ヘアサイクルのメカニズム!
髪の毛の成長サイクル、いわゆる「ヘアサイクル」は、生えては抜けることを繰り返す周期のことです。
髪の毛1本1本には寿命があり、放っておくとどこまでも伸びていくわけではありません。
それぞれの寿命で抜け落ち、同じ毛穴から新たな髪の毛が生えてきます。
ヘアサイクルには、主に3期間に分けられます。
・成長期(約2~6年)
毛母細胞が活発に細胞分裂を重ねて、新しい髪が盛んに成長する時期です。
成長期には、髪の毛全体の約90%が作られていきます。
・退行期(約2週間)
毛母細胞の細胞分裂が鈍くなることで、段々と髪の毛の成長も衰えていき、髪の毛の成長が止まります。
・休止期(約3~4か月)
髪の成長が完全にストップし、抜けるのを待っている時期です。
それと同時に、頭皮の奥では、新しい髪を育てる準備を行っています。
休止期を過ぎれば、古い髪が新しい髪によって押し出されます(脱毛)。
ちなみに脱毛に関しては、1日に平均50~100本ほどが抜け落ちています。
これで、髪の毛の成長サイクルのメカニズムが分かったことでしょう。
実は死んでる細胞の髪の毛も、頭皮によって成長サイクルが生まれるのですね。
では、髪の毛は一体どのような成分でできているのでしょうか。
死んでる細胞、髪の毛を作る成分の秘密?
「髪の毛をうっかり焦がしてしまった!」
そんな経験はあまりないと思いますが、髪を焦がすと硫黄のような臭いがします。
それは、髪の毛の主成分、90%以上が「ケラチン」という硫黄を含むタンパク質で構成されており、18種類のアミノ酸が結合してできているからです。
その中でも主に含まれているのが、シスチン・グルタミン酸・ロイシンになります。
以下で簡単にご説明していきます。
・シスチン
ケラチンの約15%を占めるアミノ酸です。
美肌・美容効果やアンチエイジングのサポートをしてくれています。
・グルタミン酸
ケラチンの約14%を占めるアミノ酸です。
脳を活性化させ、美肌に効果的な働きがあります。
・ロイシン
ケラチンの約10%を占めるアミノ酸です。
肝機能を向上させ、筋肉強化の期待があるとされています。
以上が、ケラチンに含まれている主なアミノ酸ですが、他にも15種類のアミノ酸が含まれています。
また、ケラチンには、紫外線など外部の刺激やダメージから守る、バリア的な役割があります。
死んでる細胞の集まりである髪の毛に、このような主成分があるとは驚きですね。
では、そんな髪の毛は、一体どのような構造になっているのでしょうか?
髪の毛の構造はどうなっているの?
まず、髪の毛の構造は、大まかに分けて3層から成り立っています。
・キューティクル(毛小皮):一番外側
・コルテックス(皮質):中間部
・メデュラ(髄質):中心部
では、この3つの部位の役割をご説明していきます。
①キューティクル(毛小皮)
一番外側の表面部分であり、硫黄を多く含むケラチンタンパク質が主成分です。
キューティクルは半透明の鱗状で、タケノコの皮のように、毛根から毛先に向かって5~6枚重なっています。
この重なり合ったキューティクルの状態が、髪の毛の手触りや艶に影響してきます。
役割としては、髪の内部組織を、外部のダメージや刺激から守るバリアをしていますが、そのキューティクル自体が剥がれてしまうと、枝毛や切れ毛などの毛髪トラブルに繋がります。
②コルテックス(皮質)
髪の約85~95%を占めており、非常に重要な役割を果たしています。
主な成分は繊維状のタンパク質で、このコルテックスのタンパク質・脂質・水分量が、髪の太さや硬さなど、髪質を作り出す働きをしています。
また、髪の色を決める、メラニン色素も含まれています。
③メデュラ(髄質)
髪の毛の中心部にあるメデュラは、グルタミン酸と、金属を含む非ケラチンタンパク質からできています。
役割としては、紫外線や熱から頭皮を守ったり、髪の毛の艶に関係していると言われています
ただ、キューティクルやコルテックスとは異なり、依然多くのことが解明されていません。
詳しい情報は、今後の研究に期待されますね。
それにしても、死んでる細胞である髪の毛に、このような構造があるとは驚きですよね。
では、そもそも髪の毛の役割とは、一体何なのでしょうか。
詳しくご説明していきます。
死んでる細胞でも役割がある!そもそも髪の毛の役割とは?
普段気にすることがない、髪の毛の役割とは、一体何なのかご存知でしょうか。
逆に、毛髪がないことで、何か不具合が出てくるのでしょうか。
では、髪の毛の役割を整理してご説明していきます。
①衝撃を吸収・緩和
外部からの衝撃を吸収・緩和する、クッション的な役割があります。
髪の毛には、それぞれ1本1本に小さな空気が入っており、その量が寄り集まって衝撃を緩和するというわけです。
また、人の頭部には、衝撃に対応できる脂肪や筋肉がほぼ無いため、主に頭蓋骨が脳をガードしています。
人間の頭部は生きていく上で、非常に重要な部位なので、衝撃を吸収する髪の毛は必要不可欠ですね。
②有害な成分を排出
体内に溜まってしまった有害な成分(重金属など)を、体外に排出してくれます。
というのも、人間の体内では、有害物質を毛髪に送り込み、やがて髪の毛の成長サイクルの過程で自然に抜け落ちる、いわば「デトックス機能」があるのです。
③体温の保持
先に述べましたが、髪の毛はそれぞれに小さな空気が入っており、それが重なり合って毛同士の隙間に「空気の層」を作り出します。
それが断熱材的な体温の保持に繋がり、同時に衝撃を緩和する役割を果たしているのです。
死んでる細胞とは言え、髪の毛の役割は侮れませんよね。
さて、これまで髪の毛の性質や役割などをご説明してきました。
しかしながら、髪の悩みをお持ちの方の中には、疑問に思うことがあると思います。
それは、死んだ細胞である髪の毛が傷んだ場合、トリートメント剤で修復できるのか、ということです。
では、それについてご説明していきましょう。
髪の毛は死んでる細胞!傷んだ髪の毛は修復できるの?
「髪の痛みを治してくれるトリートメント」
「傷んだ髪を修復するトリートメント」
これらは、美容界における聞きなれたフレーズですよね。
ですが実際、トリートメントには髪へのダメージを緩和することはできても、修復する力はありません。
ましてや、髪は死んでる細胞の集まりであるため、1度ダメージを受けると、元に戻ることはないと言われてきました。
しかしながら、近年2017年の研究結果で、髪の主成分である「ケラチンタンパク質」には、元に戻ろうとする自己再生力あることが分かったのです。
そのケラチンタンパク質に、自己再生を促すのが「iDTコンプレックス」です。
つまり、死んだ細胞である髪の毛の「ケラチンタンパク質」が、実は再生できるということなのです。
今までの「髪=死んだ細胞」という常識を覆す研究が、今後どのように動いていくのか注目したいところですね。
人が生きていく上で重要な髪の毛
人類が地球上に誕生して以来、体毛、髪の毛は非常に重要な役割を果たしてきました。
髪の毛は死んだ細胞ではありますが、人が生きている上で、また、体を守る上で、なくてはならない存在です。
髪はダメージを受けたら再生することはない、と言われてきましたが、近年の研究で、髪の毛の在り方も今まさに変わろうとしています。
今後の研究に注目したいですね。