例えば、ご両親が高齢になった時に、在宅療養になる場合があります。
特に独身男性の場合は、主な看護を自分が行わなければいけません。
そんな時に困らないように、基本的な髭剃りをはじめとした整容の手順や注意点についてお話しします。
在宅療養の援者はとても大変だとは思いますが、心を込めて看護してあげましょう。
髭剃りも大事な整容
家庭それぞれには色々な事情があり、ご両親の在宅療養の看護をする立場になった男性も少なくないでしょう。
在宅での療養には、マニュアルもなければ、定型もありません。
だからこそ、基本的な看護の仕方や注意点もわからずに、不安な思いをしてしまいますよね。
看護される側と看護する側、それぞれに療養のかたちがあります。
まずは焦らずに、看護される側とあなたとで、少しずつかたちを作り上げていくという気持ちで進めていきましょう。
まず、大事なのは整容をおろそかにしないことです。
整容とは、身だしなみを整えることを言います。
整容には洗顔、髭剃り、整髪、歯磨き、爪切り、更衣などがあります。
健康な男性だったら、髭剃りや髪を整えるなどをして身だしなみを整えるのは当たり前であり、簡単なことですよね。
しかし、看護される側からすると、身体的状態や精神的状態などの影響で、自分で行うのが想像以上に困難で、援助が必要となる場合があるのです。
整容をおろそかにすると、衛生面や生活の質に悪い影響を与えるリスクが発生します。
髭剃りも立派な整容の一つ!整容における看護の目的
高齢になって身体が自由に動かない状態になっても、誰でも身だしなみは整えておきたいという気持ちがあると思います。
整容における看護には、次のような目的があります。
●被看護者の気分転換を図る
健康な人も、入浴後はサッパリして気持ちが良いですよね。
それと同じように、髭剃りなどの整容や、身体を清拭して清潔にすることで、被看護者の気持ちがスッキリします。
沈みがちな気持ちの気分転換が図れるのです。
それが、健康になろうという意欲の向上や、生活の質の向上に繋がることもあります。
●清潔保持
皮膚や粘膜を清潔にすると、新陳代謝の促進・生理的機能の維持・感染予防にも効果的です。
●生活リズムを確立する
身体が自由に動かせない状態により、今までしてきた生活習慣ができなくなったりします。
何も苦労なくできていたことができないのは、当事者にとっては大きなストレスです。
自暴自棄になってやる気を失ってしまう場合もあります。
そうならないためにも、整容によってメリハリのある生活リズムを確立することは大切なのです。
次項は、整容における看護の手順と注意点についてお話しします。
整容における看護の手順と注意点①
整容は人間の基本的な欲求です。
その欲求の程度は個人個人で違います。
ですから、相手の求めていることや置かれている状態を理解し、相手に合わせた看護をしてあげることが求められます。
整容への援助を行う際の注意点は、プライバシーや環境に配慮し、安全に行えるかを事前に確認しておくことです。
特に、怪我をさせる可能性の高い髭剃りや爪切りは、十分に気をつけなければいけません。
効率よく動くためにも、必要な物品はあらかじめ準備をしておきましょう。
●洗顔
被看護者の状態によっても異なりますが、ベッドの上か、移動可能であれば洗面所で行います。
洗顔が困難と思われる場合は無理をせずに、温かい濡れタオルなどで「さっぱりしようね」と声をかけながら清拭するだけでも良いです。
清潔になった自分の顔を鏡で見てもらい、清潔を保つことへの意識付けを忘れずに行ってください。
●整髪
ブラシを使って整髪してあげましょう。
注意点としては、髪が絡まっている場合は強引に引っ張ると痛いので、髪の根元を押さえながら丁寧にブラッシングしてあげましょう。
ブラッシングが終わったら、清潔さを保つためにも抜け毛をすぐに処理してください。
洗顔同様に鏡を見せて、仕上がりを確認してもらいましょう。
整容における看護の手順と注意点②
引き続き、整容における看護の手順と注意点についてお話ししていきます。
●爪切り
被看護者が衛生的で安全な日々を送るためにも、爪切りを習慣化することは大切です。
高齢になってくると、爪が厚く硬くなったり、変形したりします。
そうすると、爪切りが簡単に行えなくなり、怪我をさせてしまうリスクを伴います。
くれぐれも慎重に行いましょう。
爪切りの注意点は、
・爪を蒸しタオルなどで温めて、柔らかくしてあげる
・誤って爪切りで肉を挟まないように、よく確認する
・爪の状態や爪周辺の観察を忘れずにしておく
・爪切り後はしっかりと掃除して、爪の破片を残さない様に清潔に保つ
想像以上に深爪になってしまう場合もあるので、ギリギリまで短く切ろうとしないでください。
●髭剃り
被看護者が男性の場合は髭が伸びますよね。
顎下の髭剃りが行いやすくするため、ベッドに仰向けになってもらったままで髭剃りをしてあげましょう。
電動シェーバーを使用する場合は、逆さにすると中に溜まっている髭が落下することがあるので、剃る前には必ず掃除しておきましょう。
古くなった歯ブラシを使うと掃除しやすいですよ。
カミソリを使う場合は、シェービングフォームなどを活用して、皮膚を傷つけないように気をつけて行いましょう。
髭剃り後は必要に応じて清拭をし、シェービングローションなどで肌を整えてあげてくださいね。
髭剃り一つでも被看護者の満足度を確認する
髭剃りをしてサッパリした後には、歯磨きもしっかりしてあげましょう。
義歯の有無や咳をしていないかなどに配慮して、被看護者の状態に合わせて歯磨きを行います。
注意点としては、口腔内の状態があまり良くなく、歯ブラシを使用すると出血してしまう場合や、口腔内の乾燥が酷い場合があることです。
そういった時は無理に歯ブラシを使用するのではなく、綿棒を湿らせて口腔内を清潔にしてあげましょう。
ここで、整容に対する看護の注意点をもう一度確認しておきましょう。
何度かお伝えしましたが、整容は私達人間の基本的欲求の一つです。
そして、整容をどこまで求めているのかは人それぞれ違います。
ですから、可能な限り被看護者の欲求に沿えるように、看護する側がペースに合わせてあげる必要があります。
清潔さをキープすることや、整容にとらわれすぎてはいけません。
押しつけや無理強いをしてしまうと、生活の質を向上させるどころか被看護者が苦痛に思ってしまいます。
被看護者の精神的な部分に寄り添ってあげることが大切なのです。
整容援助の際はコミュニケーションをとりながら、皮膚の状態や満足度を確認しながら行いましょう。
タッチングによって、精神的なケアを行うこともできますよ。
在宅看護で安全に入浴してもらうための注意点
在宅看護で髭剃りなどの整容をしてあげることは、意味のある、とても大切なことなのですね。
被看護者が入浴できる状態であれば、ぜひ入浴させてあげましょう。
ゆっくりと温かい湯船に浸かることは、身体が清潔になるだけでなく精神的にもリラックスできるからです。
しかし、入浴をさせてあげることは援者にとって負担が大きいのも確かです。
そこで、被看護者に安全に入浴してもらうための注意点をご説明します。
入浴介助中に足りないものに気が付いても、危険なため目を離すことができません。
ですから、まずは事前に入浴前の準備を万全にしておく必要があります。
入浴の際に考えられる危険から、被看護者を守ってあげましょう。
●入浴前に血圧や体温を計測して体調を確認する
●入浴前にトイレと水分補給を済ませておく
●温度差によるヒートショックを防ぐために、浴室と脱衣所は温めておく
●入浴中に使用するスポンジや石けんなどは、使いやすい位置に置いておく
●入浴後にすぐに使えるように、塗り薬や保湿剤を用意しておく
●入浴後に使用するタオルや着替えは、使う順番に重ねておく
入浴で水分が失われるので、入浴前後は必ず水分補給を行いましょう。
整容と同時に精神的なケアも忘れずに
健康な人にとって整容することは、当たり前のように行われています。
しかし、ベッド上での生活をよぎなくされるとおろそかになりがちです。
子育てなどで誰かのお世話を経験したことがある女性と比較すると、仕事一筋の男性が多い中で、誰かの看護をすることはとても大変なことかもしれません。
しかし、被看護者の気持ちを尊重し、その人に合った方法で、心を込めて整容援助をしてあげてください。