皮膚の細胞は脱落して垢となります。
脱落した細胞を補うべく、新たに細胞を生み出すことで、皮膚はターンオーバーを繰り返しています。
つまり、私たちの皮膚は常に再生しています。
この記事では、皮膚の再生に使われるビタミンについてご紹介します。
皮膚の再生の救世主!ビタミン
読者の皆さんは、「身体の再生」と聞くと何を思い浮かべるでしょうか?
「トカゲの尻尾は一度切れても、また新しく生えてくる。」
「肝臓を手術で半分切除したけど、大丈夫。再生して元に戻るから。」
などというような話を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
他にも、再生医療や再生医学など、「再生」というと非日常的なことと思われる読者の方も少なくはないかもしれません。
しかし、「再生」はもっと身近なところで日常的に起きています。
それは、私たちの身体を包んでいる「皮膚」です。
再生は、皮膚で常に起きているのです。
私たちの皮膚は、細胞からできています。
皮膚の細胞は、失われては新しく補充されながら常時ターンオーバーしているのです。
細胞が新しく増えていくためには、栄養が必要です。
数ある栄養の中でも皮膚の再生に必要不可欠なのが、「ビタミン」です。
この記事では、皮膚の再生とビタミンの関係についてご紹介します。
皮膚の再生のポイント・細胞外マトリックス
再生とビタミンの関係を見ていく前に、まずは「皮膚の構造がどういうものか」ということをご説明します。
私たちの皮膚は、大きく三つの層に分類できます。
・身体の一番内部ある「皮下組織」
・皮下組織の外側にある「真皮」
・真皮の外側にある「表皮」
の三つです。
「表皮」には、角質層と呼ばれるバリア機能と保湿機能を持つ特殊な層があります。
私たちが、肌と呼んでいるのはこの角質層のことになります。
この角質層の細胞は、日々脱落して垢となって身体から落ちていきます。
この脱落を補充するかたちで皮膚の細胞は、常に増殖しています。
角質層の元になる細胞は、真皮との境界に存在している「表皮細胞」と呼ばれる細胞です。
表皮細胞は、常に分裂を繰り返して新しい表皮細胞を作り続けています。
新しく生まれた表皮細胞は、失われた角質を補うべく、角質層に向かって移動していきます。
この表皮細胞は、移動していく過程でその性質を変えていきます。
角質層に辿り着く頃になると、表皮細胞は「角質細胞」という、全く別の性質をもった細胞になります。
角質細胞は細胞の遺伝情報が詰まっている核を捨てて、「ケラチン」と呼ばれる化学的な刺激に強いタンパク質を豊富に保有するようになります。
また、角質細胞どうしはセラミドなど脂質成分で満たされており、これらの成分が角質層のバリア機能と保湿機能を可能にします。
皮膚の再生のポイント・細胞増殖能
では、皮膚の再生においてビタミンはどこで必要とされるのでしょうか?
3つの過程、すなわち、
・機能的な細胞外マトリックスの産生
・表皮細胞の細胞分裂
・真皮を走行する血管の新生
で特に重要です。
皮膚の再生には表皮細胞が健康な状態である必要があります。
表皮細胞の健康状態を支える上で重要な役割を果たすのが、真皮層側に存在している細胞外マトリックスです。
細胞外マトリックスは、コラーゲンやヒアルロン酸など保水力と柔軟性の高い分子で満たされています。
コラーゲンはタンパク質で、ヒアルロン酸は糖が直鎖状に連なった糖鎖の一種です。
これらの分子は、表皮細胞の健康状態を制御する「成長因子」などをリザーブしたり、細胞に届けるのを助ける役割を果たしています。
また、物理的に表皮細胞を保持する役割も担っています。
ビタミン類は、細胞外マトリックスの構成分子の合成に重要です。
ビタミン類のなかでも、ビタミンCはコラーゲンやヒアルロン酸の効率的な産生に必要です。
そのため、ビタミンCが不足してしまうと、細胞外マトリックスが貧弱になってしまい、皮膚の再生がうまく行われなくなってしまいます。
細胞外マトリックスに有効なビタミン
皮膚の再生において、表皮細胞の細胞分裂が適切に行われることは不可欠です。
細胞分裂が起きないと、皮膚のターンオーバーが遅くなり、皮膚の健康状態を保つことができません。
逆に、細胞の分裂が活発になりすぎて、ブレーキが効かなくなると、異常な細胞塊を形成し腫瘍となってしまいます。
皮膚で腫瘍ができると、良性の場合はよいのですが、突然変異が蓄積して悪性の腫瘍となると、全身に転移する悪性新生物(ガン)として私たちの身体を蝕むことになります。
一般に、細胞分裂はダイナミックな細胞の機能の一つで、多くのエネルギーと栄養を必要とします。
ビタミン類も例外ではありません。
そのため、ビタミン類が欠乏すると皮膚の再生は妨げられます。
細胞が分裂する際には、遺伝情報をコードしているDNAやRNAなど、核酸の新規な合成が必須です。
核酸の合成には葉酸(ビタミンB9)が補酵素として必要です。
また、ビタミンB6は細胞の主要成分であるタンパク質の基になるアミノ酸の合成と供給に重要な補酵素です。
したがって、これらのビタミンは皮膚の再生に重要であると言えます。
皮膚の栄養源・血管に有効なビタミン
表皮の下の層である真皮には血管が張り巡らされています。
皮膚の再生能力を考える上で、血管の働きはとても重要です。
血液は、食事によって摂取した栄養を体全体に届けます。
皮膚においても、栄養は血管から供給されます。
そのため、血管がうまく機能しないと、皮膚の再生にも支障が生じます。
健康的な血管を維持するためにもビタミン類は大切な栄養素です。
健康な血管の維持にはすべてのビタミン類をバランスよく摂取する必要があります。
その中でも、特に、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEは、血管の強化や血管の保護作用を有しますので、不足しないような栄養摂取が望まれます。
ただし、脂溶性のビタミンA、D、E、Kは取りすぎると体内に蓄積してしまいます。
そのため、身体の状態を悪くすることもありえますので、過不足なくビタミンを摂取することが大切です。
このように、正しくビタミン摂取をすることで血液循環を活性化し、皮膚のターンオーバーを改善することにつながります。
皮膚の再生に有効なビタミンを含む食べ物
ここまで、皮膚の再生に使われるビタミン類についてご紹介してきました。
多くのビタミン類は、現代日本の平均的な食生活で不足することはほとんど無いと考えられます。
しかし、肉中心、または、タンパク質中心の食生活をしていると、摂取する栄養素に偏りが生じてしまいます。
したがって、野菜、肉、魚、乳製品、炭水化物などをバランスよく食べることが、皮膚の健康的な再生には不可欠です。
ただ、栄養が足りていないないとか、偏食気味な人には、以下の食べ物が皮膚の再生に良いと考えられます。
・ビタミンB類やタンパク質が豊富な「レバー」
・ビタミンCが豊富な「ミカンなどの柑橘類」
・皮膚の健康を保持する働きのある多様なビタミン類が含まれる「アボカド」
これらの食品を積極的に取り入れた食生活で皮膚の再生能力を高めることに繋がります。
再生を活性化するビタミンパワーで健康美肌を!
私たちの皮膚は、常に再生しています。
活発な皮膚の細胞増殖には、健康的な細胞外マトリックスと血管機能が必要不可欠です。
健康的な皮膚環境を作るビタミン類を摂取して、強くて美しい肌を目指してみませんか?
食生活に気をつけることで、ビタミン類を効果的に摂取することができるので、是非参考にしてください。