最近では美容効果を目的に、デトックス効果の高いとされるサウナやヨガをしている女性も増えています。
また、最近ではなくても、「悪いもの(老廃物)を出す」という意味でサウナに入っている男性も多くいることでしょう。
しかし、2018年の研究により、発汗によるデトックス機能は微々たる効果だということが明らかになりました。
そこで、この記事では、発汗によるデトックス機能の嘘について、その根拠や汗の仕組みをご説明していきます。
発汗による老廃物の排出は嘘?そもそも発汗とは
近年では、発汗による老廃物の排出について、その高いデトックス効果を謳うことが多く、活発的な発汗を促進するサウナやヨガは人気を帯びています。
そんな「汗をかく」行為は、本当にデトックスとしての機能は薄いのでしょうか?
その嘘について知るために、まずは、私達の発汗機能の仕組みについてご説明していきましょう。
そもそも、なぜ人には発汗機能があるのかご存知でしょうか?
人は、体温を一定に保持することができる「恒温動物」で、外部の温度によって体温が変化する「変温動物」とは対義する生態です。
私達にような恒温動物が、常に体温を一定に保つためには、「発汗」機能による体温調整が非常に重要です。
例えば、運動や外気の暑さによって、人は汗をかきます。
これは、体内に熱が留まらないように、熱を汗として体外に放出させる、「体温調整」としての機能です。
これによって、人は一定の体温を維持することができるのです。
では、その排出された汗の成分には、どのようなものが含まれているのでしょうか?
次項で詳しく見ていきましょう。
汗に含まれる老廃物の嘘!発汗の仕組みと成分について
汗に含まれる老廃物について知るためには、汗の仕組みとその成分について知る必要があります。
そもそも汗の99%は水分でできており、それ以外の成分は、ほとんどが塩分で構成されています。
汗はもともと、体内の組織に栄養や酸素を送る「血液」が原料になっており、体外に出される際は、汗となって皮膚上の「汗腺」から排出されています。
「汗腺」とは、皮膚上にある汗を分泌する腺で、この中の「分泌部」によって汗の基が作られます。
ここで血液を原料にして作られた汗の基は、「血漿(けっしょう)」と呼ばれ、この時点では、体に必要なミネラル成分も含まれています。
そのため、このミネラル成分が体外に排出される前に、汗腺機能によってほとんどが再吸収され、体を作るためのミネラルとして使われていきます。
そして、この過程によって、99%の水分と、塩分などで構成された汗は、体内の熱と共に皮膚上から排出されていくのです。
汗の成分をもっと細かく言えば、99%の水分と、残りの成分にカリウム、マグネシウム、亜鉛、鉄などのミネラル、さらに尿素などの老廃物となります。
したがって、その中に含まれた老廃物は、実に微々たるものだと言えます。
更に、最新の研究では、汗に含まれた微々たる老廃物が、どのくらいの割合で入っているのか、そのデトックス機能の嘘を明らかにしています。
では、次項で詳しくご説明していきましょう。
発汗のデトックス機能は嘘!汗に含まれる老廃物の割合は?
最新の学術誌に掲載された報告によれば、汗に含まれている老廃物の量は、実にごくわずかなものだと主張しています。
また、体内に蓄積する汚染物質を論じる研究者によって、その根拠となる実験も行われています。
その実験内容とは、まず、激しい運動を取り入れることによって、人が1日にどれほどの量の発汗を行うのか、そして、その成分として、老廃物はどのくらいの割合で含まれているかを明らかにするものでした。
その結果として、2リットルほどの発汗量が確認できましたが、その汗に含まれる老廃物は、たったの0.1ナノグラム以下ということが分かりました。
これはつまり、日常的に汗の成分として老廃物が排出される量は、0.02%ほどと大変少ないことを表します。
例え、1日にどれだけの汗をかいたとしても、排出される老廃物は1%に満たないと言えます。
この研究結果によって、「汗をたくさんかいて、老廃物をどんどん出そう!」という発汗のデトックス機能は、嘘と証明したとされているのです。
これは、発汗のデトックス性を押している美容業界にとっては、大きな衝撃と言えることでしょう。
体内の老廃物はどうやって排出されている?
前項では、最新の研究結果によって明らかにされた、発汗のデトックス性の嘘をご説明してきました。
では、体の老廃物はどのようにして体外へと排出されているのでしょうか?
結論から言うと、体内の老廃物は、人が生きる上では欠かすことのできない、便によって排出されています。
もっと細かい割合で見てみると、便75%、尿20%、爪・頭髪1%、その他3%となっており、まとめてしまうと、老廃物の排出は、ほとんど便や尿によって行われていることが分かります。
したがって、発汗によって微々たるほどの老廃物を出すよりも、もともと人体に備わっている「排泄」によって老廃物を出す方が、比較できないほどの高いデトックス性を持っているのです。
そのため、便秘解消に専念することで、老廃物を溜めない体を維持できると言えるでしょう。
汗をかくことで汗腺機能を鍛える!発汗の重要性について
これまでに、発汗による老廃物の嘘について、詳しくご説明してきました。
しかし、だからと言って、汗をかくことが無意味であるということではありません。
前述したように、体温を一定に保つための「体温調整」として、適度な発汗は非常に重要な役割を担っています。
また、発汗を促す汗腺機能は、適度な運動をして汗をかくことによって鍛えられます。
仮に、運動不足によって汗腺機能が低下してしまうと、ベタベタとした臭いのある、「質の悪い汗」が排出されるようになります。
と言うのも、血漿に含まれたミネラルなどの成分を、機能が低下した汗腺はうまく再吸収することができずに、そのまま汗として排出してしまうからです。
そのため、余分な成分を含んだ汗は、嫌な臭いの元にもなります。
また、体にとって必要な成分が、汗としてどんどん出されてしまうため、熱中症や疲労を起こす原因にも繋がります。
したがって、適度な運動などで汗をかくことは、汗腺機能を鍛える上では非常に大切なことだと言えます。
では続いて、普段の習慣から汗腺機能を鍛えていく方法について、もう1つご紹介していきましょう。
汗腺機能を鍛えるために!入浴やサウナでのトレーニング
汗による老廃物の排出が嘘でも、汗をかくことは生命を維持することと同じくらい大事なことだと言っても、過言ではありません。
汗腺機能を鍛えるには、適度な運動の他に、習慣的な「入浴」によって効果的に行うこともできます。
これは、「湯船に浸かる」ということが、汗腺機能を効果的に鍛えることに期待がされています。
したがって、ただシャワーを浴びるだけでは、汗腺機能のトレーニングにはならないので、できるかぎり湯船に浸かって、発汗を意識することが大切です。
特に、半身浴や足湯は、湯に浸かりながら発汗し、上半身が体温を冷ましていくので、効率の良い汗腺機能のトレーニングになります。
また、これは入浴だけではなく、サウナによっても同様に汗腺機能を鍛えることができます。
つまり、汗をかくことに慣れることは、汗腺を開かせる効果があり、これまで衰えていた汗腺も活性化し始めます。
ただ、老廃物を排出する意味では、入浴もサウナも効果が薄いと言えます。
それでも適度な発汗を行い、健康的な体を作っていく上では、とても重要な意味を持ちますね。
いずれにしても発汗は健康の近道
最新の研究結果によって、発汗における高いデトックス性は期待できないことが明らかにされました。
また、発汗の仕組みや、汗の成分を照らし合わせてみても、汗に含まれる老廃物や毒素は、ほんの微々たるものに過ぎないことが分かります。
ただ、デトックス性がないからと言って、発汗が意味のないものとは捉える必要はありません。
むしろ、汗腺機能を鍛えることで、臭い防止やベタつきなどは抑えられます。
そのため、適度な運動や入浴によって、汗腺機能を鍛えていきましょう。