男性の皆さんは、自分の耳垢(みみあか)を気にしたことはありますか?
耳垢には「乾いているタイプ」と「湿っているタイプ」の2種類があると、聞いたことはないでしょうか。
日本人の多くは乾いている耳垢ですが、体質的に湿っている人もいます。
では、耳垢に乾湿があるのはなぜなのでしょう?
こちらでは、耳垢が湿っている原因や、湿っているタイプの人の耳垢ケアや注意点についてご説明します。
乾いている耳垢や湿っている耳垢、この耳垢ってそもそも何からできている?
みなさんは、耳垢は何からできているのかご存知ですか?
耳垢の正体は、耳の中に付着した垢(あか)で、以下のものが混ざってできています。
●古い皮膚の残骸
●空気中の埃や塵
●外耳道の皮膚に分布する皮膚腺や耳垢腺(じこうせん)からの分泌物
外耳道(耳の穴の中)の皮膚は、鼓膜から外へ外へと移動しいて、古くなると耳の入り口付近で剥がれ、耳垢腺などから出た分泌物や埃などが混ざって「耳垢」になります。
耳垢は耳の入り口から奥1.5cm程度までの範囲にしか存在しません。
この耳垢は、見た目から2種類に分けられます。
乾いている「乾性耳垢」と、湿っている「湿性耳垢」です。
日本人の約7~8割が乾いている耳垢で、湿っている耳垢の人は少数派ということになります。
逆に、欧米などでは湿っている耳垢が多いといわれています。
そのため、欧米では日本で使うような耳かきは普及されておらず、耳掃除には綿棒が使われます。
このような耳垢の違いの原因は「遺伝」にあるということが、日本の研究グループによって解明されています。
耳垢の乾湿の違いは、耳垢腺からの分泌物の量の違いや、耳垢自体の量によって決まります。
では、この耳垢には何か役割はあるのでしょうか。
次項で見ていきます。
耳垢にも働きがある?!その役割とは?
耳垢にも、実は次のような働きがあります。
●ゴミの侵入を防ぐ
分泌物が混ざった耳垢には適度な粘着性があり、耳に入ってくるゴミや埃を吸着する働きがあります。
それらは、外耳道の皮膚の働きや咀嚼などの動きによって、耳の入り口部分に向かって徐々に流れて耳の入り口まで運び出してくれます。
また、耳垢の成分には臭いや苦味があり、昆虫の侵入を未然に防いでいるともいわれています。
●外耳道や鼓膜の保護と潤滑
外耳道も鼓膜も薄い皮膚組織でできているため、耳垢はそれらを保護し、分泌物(主に脂質)で湿潤に保っています。
●感染の予防
耳垢の成分は酸性で、リゾチームやIgAなどの病原体を防ぐ働きを持つ物質を含むため、抗菌作用があります。
このように、耳垢は不要な汚れの塊ではなく、しっかりとした役割を持っているのです。
最近では、「耳掃除は行わなくてもよい」という耳鼻科学会からの診療ガイドラインも公表されてします。
耳垢には役割があり、むやみに耳掃除を行わなくても自浄作用で自然に体外へ排出する働きもあるからです。
ただ湿っている耳垢は、自然排出が妨げられた場合などに外耳道に溜まってしまい、そのまま固まることもあります。
外耳道に耳垢が溜まってしまうと、様々な症状を引き起こし、病気の原因にもなりかねません。
耳に溜まりやすい「湿っている耳垢」は、遺伝の他にもいくつかの原因で引き起こされるので、次ではその原因を挙げていきます。
耳垢が湿っている場合に考えられる原因とは?①
普段から耳垢が湿っている人は、皮脂腺と耳垢腺が発達していて、通常より湿り気を与える皮脂などの分泌量が多いと考えられます。
このように、遺伝が原因で体質的に耳垢が湿っている場合には、ほとんど心配はありません。
耳垢が湿っている原因は、遺伝以外に4つ考えられます。
ここでは、まず、生活環境による2つの原因についてご説明します。
①プールやお風呂の後に湿った耳垢が出る
プールやお風呂などの水場で、耳の中に水が入って耳垢と混じると、湿った耳垢が出てくることがあります。
黄褐色で続けて出るようでなければ、心配はありません。
②皮脂腺からの分泌が活発になっている
脂肪分を摂り過ぎる食生活などで、皮脂腺の働きは左右されます。
皮脂腺が活発に働くと皮脂腺の分泌量が増え、湿った耳垢になります。
また、激しい運動でたくさん汗をかいた時など、汗によっても一時的に耳垢が湿ることがあります。
このように、生活環境で耳垢が湿っている場合もありますが、次に挙げるように耳の「炎症」が原因で湿っていることもあります。
次項で詳しく見ていきます。
耳垢が湿っている場合に考えられる原因とは?②
前項でご説明したように、生活環境が原因で耳垢が湿ることがあると分かりましたが、その他にも、以下のような原因があります。
③耳掃除を行いすぎる
耳掃除をしすぎて炎症を起こすと、傷口やそこにできた湿疹から「滲出液(しんしゅつえき)」と呼ばれる体液が出てくることがあります。
これは炎症部分を修復するために、体が白血球を多く含む滲出液を出す仕組みで、この滲出液によって耳垢が湿る場合があります。
④外耳道炎や中耳炎を発症している
鼓膜よりも外側の外耳道が細菌に感染し炎症が起こる「外耳道炎」になると、滲出液が出て耳垢が湿るほか、膿がでる「耳だれ」の症状が見られ、痛みやかゆみがでることがあります。
鼓膜の内側の中耳に炎症が起きる「中耳炎」になると、「外耳道炎」と同じように耳だれが起こり、耳の中が湿って耳垢も湿っている状態になります。
このように、耳の掃除や細菌による炎症が原因で、耳垢が湿っている場合もあるのです。
耳の炎症が進むと、耳から嫌な臭いがしたり、難聴やめまい、夜も眠れないほど痛くなるなど、辛い症状を引き起こすこともあります。
いつもは湿っていることのない耳垢が湿っていたり、不快感を伴うような場合には、病院を受診することをおすすめします。
耳垢が湿っている原因には、様々なものが考えられることが分かりますが、では、耳垢はどのように対処すればよいのでしょう。
次では、耳垢のお手入れで注意する点をお伝えします。
自然排出するはずの耳垢が溜まってしまう原因とお手入れの注意点
前にもお話したように、耳は耳垢を自然排出する働きがあります。
耳垢が湿っているタイプでも、耳垢が移動している間に乾いて、自然に耳の穴から外に剥がれ落ちます。
健康な状態であれば問題ありませんが、耳垢の自然排出が妨げられた場合に外耳道に溜まってしまい、様々な症状や病気を引き起こす可能性があります。
自然排出を妨げる原因としては、以下のようなものあるので注意が必要です。
●イヤホンや耳栓、補聴器などの長時間の使用
イヤホンなど、毎日のように使う習慣がある人は、耳垢が外に排出されにくく、また耳の中に湿気がこもりやすいため、耳垢が湿り、細菌やカビも増えやすい状態になります。
イヤホンの使用で耳の内部の皮膚を傷つけ、その傷から細菌やカビが入り込み外耳道炎を起こす恐れもあります。
イヤホンの使用時間はなるべく短時間を心がけ、イヤホン自体も清潔に保ちましょう。
●耳かきや綿棒で、耳垢を耳の奥に押し込んでしまった時
耳かきや綿棒で耳垢を無理に取ろうとして、逆に奥に押し込んでしまうことがよくあります。
鼓膜の近くなど耳垢が本来あるべき場所より奥に詰まってしまうと、自浄作用が働かなくなり、様々な症状が現れる原因になります。
このほか、外耳道が狭い人や高齢者は耳垢が溜りやすい傾向にあります。
耳を塞いで耳閉感や難聴が起こる「耳垢塞栓」になった場合には、耳鼻咽喉科で処置してもらう必要がでてきます。
湿っている耳垢のケア方法と心掛けとは?
前述したように、さまざまな原因で耳垢は溜まってしまうことがあります。
イヤホンなど耳を密閉するものの長時間の使用はなるべく避け、また、自己流の耳掃除で耳垢を奥に溜め込まないよう、注意しましょう。
耳垢が湿っているタイプは、乾いているタイプよりも耳垢が固まりやすく溜まることが多いので、やはり定期的なお手入れが必要となります。
数ヶ月に1度くらいの頻度で、耳鼻科で耳掃除をしてもらいましょう。
「耳掃除で耳鼻科を受診するなんて…」と考えてしまうかもしれませんが、耳垢の除去は医療行為としてちゃんと認められているものなので、躊躇することなく定期的に受診しましょう。
自己流での耳掃除は、耳を傷めることに繋がるのでおすすめしませんが、どうしても気になり自分でお手入れしたいという場合には、次のことに注意して行いましょう。
●綿棒などで何度も同じ場所を擦らない
●奥まで掃除しない
●月に1~2回が限度
実際のケア方法としては、綿棒を耳の穴の1.5cmほどそっと入れ、らせんを描くように3~4回拭き取ります。
耳の健康を保つためには、自分での耳掃除は最低限にとどめ、違う方面からケアしてみましょう。
【耳の健康維持に必要なこと】
●大きい音を長時間聞かない(ヘッドホンの長時間使用など)
●適度な運動や、バランスのよい食生活
●良質な睡眠で耳も休ませる
以上のような事を心掛け、健康な耳を保ちましょう。
耳垢の実態を知り、正しい対処法で耳の健康を保とう!
耳垢には耳を守る役割があり、近年では耳掃除は不要な行為といわれてきています。
耳垢には2種類のタイプがありますが、耳に溜まりやすい湿っている耳垢のタイプの人には、特に定期的な耳鼻科での耳垢除去をおすすめします。
耳垢が湿っている場合には、その原因を確かめ、生活環境を変える必要もあります。
耳垢が湿る原因を知り、自分に合った対処法を考えて、健康的な耳を保ちましょう。