いま注目されている、舌の筋肉を鍛える「舌筋トレーニング」をご存知ですか?
腹筋や上腕筋を鍛えるのと同じように、「舌」も鍛えることができます。
「舌を鍛えてどんなメリットが?」と思うことでしょう。
舌を鍛えると、滑舌が良くなるだけでなく、身体の健康にも大きな効果をもたらすこと言われているのです。
こちらでは、舌の筋肉を鍛えることで得られるメリットや、鍛える方法などをご紹介していきます。
意外と大事な「舌」の働き!鍛える必要アリ!
「舌」はどんな構造で、どんな働きを持つかご存知ですか?
舌の筋肉を鍛えるお話の前に、予備知識として簡単に「舌の構造と働き」をご説明します。
舌は、主に2つの筋で構成されています。
舌の形を変える「内舌筋」と舌を前後に動かす「外舌筋」の2つの筋群です。
舌の付け根の「舌根(ぜっこん)」は、外舌筋の1つで、骨につながり前後に動かす働きをします。
対して、舌の先端部は内舌筋でできており、自由に動かして形を変えることができます。
舌は、これらの筋を使って、食べ物を噛む「咀嚼(そしゃく)」や飲み込む「嚥下(えんげ)」、発声など、大きな働きを担います。
また、味覚や知覚を感じ、食べ物を選別する役割も持ちます。
さらに、咀嚼時に唾液の分泌を助け、消化を促します。
食べ物を口の中から喉の奥へ移動させる時、舌は上あごを後方に押し、食べ物を飲み込ませる嚥下を促します。
このように、舌は物を食べるためになくてはならない器官なのです。
舌の筋肉が衰えて緩んでしまうと、嚥下困難になり、食べ物が飲み込めなくなります。
また、舌の緩みで咽頭方向に舌が下がると、咽頭がふさがれ、呼吸ができない無呼吸状態に陥ることがあります。
これが睡眠時に起こると、睡眠時無呼吸症候群(SAS)となり、不眠や日中の集中力低下、活力の低下などの原因にもなります。
舌の筋肉を衰えさせてしまうことは、日常生活や健康に意外にも大きな影響を及ぼすのです。
あなたの舌の筋肉は大丈夫?
前項では、舌が大きな働きを持ち、人間の生命維持に重要な役割を果たしていることがお分かりいただけたと思います。
では、舌の筋肉が弱っていると、さらにどのようなことが起こるのでしょう?
舌の筋肉が弱っているサインとして、次のようなものが挙げられます。
・食事中よく食べこぼす
・食事中よくむせる
・呂律が回らず会話がしにくい
これらは、高齢者によくみられるサインです。
若い人にもみられるサインには、次のようなものがあります。
・口呼吸になっている
・免疫力が低下している
・口臭が気になる
・顔がたるんできている
・イビキがひどい
このような症状がみられる場合、舌の筋肉の緩みや衰えが関係している可能性があります。
舌の筋肉を鍛えることで、これらの症状を改善することができます。
次項では、症状改善に効果的な、舌の筋肉を鍛える「舌筋トレーニング」法をご紹介します。
舌と顔の筋肉を鍛える!定番トレーニング法「あいうべ体操」
それでは、舌の筋肉を鍛える簡単なトレーニング法を、3つご紹介します。
まず1つ目は「あいうべ体操」です。
舌筋トレーニングの定番で、舌だけでなく顔の筋肉を鍛えるのにもおすすめです。
小顔効果、表情筋アップの効果で、顔の印象に大きなメリットをもたらします。
●あいうべ体操
【方法】
1.できるだけ大きく口を開き「あー」という
2.できるだけ口を横に広げて「いー」という
3.力を入れて強く前に突き出し「うー」という
4.舌を力いっぱい突き出して下に伸ばし「ベー」をする
1~4の1セットを、朝昼晩10セットずつ、1日計30セット目指して行ってみましょう。
人前ではなかなかできませんが、簡単なトレーニングなので、時間をみつけて毎日行う心掛けをしてみてください。
2~3ヶ月程で効果がでてきます。
舌を鍛えることで、常に口が空いてしまう状態が改善でき、自然に鼻呼吸にかわります。
口呼吸は、空気中の菌やウイルスが直接体内に侵入しやすく、風邪などの感染症にかかりやすいため、鼻呼吸に改善することで予防につながるのです。
免疫力の低下を防ぐことにもつながる、この「あいうべ体操」の効果は大きく、学校や施設などで実際に取り入れられ全国に広がっています。
まずは、このトレーニングを試してみましょう。
こっそり鍛える!お仕事中でもできる舌筋トレーニング
2つ目は口を閉じたまま行えるトレーニングです。
オフィスなどでも気軽に行えます。
滑舌が良くなり、口の周りのしわの改善など、顔のたるみにも効果が期待できます。
●口を閉じたまま舌筋トレーニング
【方法】
1.トレーニング中は、ずっと口は閉じたまま行う
2.舌先を下唇と下歯茎の間にさし込む
3.舌の先端に力を入れ、右端から左端に5秒程かけてゆっくり移動させる
4.左端まで到達したら、力を緩めずそのまま右端まで5秒程かけて戻る
5.これを3往復繰り返す
6.下が終わったら、同じように上唇と上歯茎の間に舌先をさし込み、ゆっくり端から端に移動させる
7.上も3往復繰り返す
簡単そうにみえますが、力を入れて行うこのトレーニングは意外と大変で、舌の筋肉を鍛えるという実感がもてます。
口臭予防に期待!?舌トレーニングと口内ストレッチ
3つ目は、歯科医師が考案したといわれる、口臭予防の舌筋トレーニングです。
唾液研究で有名な歯科医師が考案した舌筋トレーニングでは、唾液腺を刺激し、唾液の分泌を促します。
唾液の殺菌作用で舌苔(ぜったい)も発生しにくく、舌の乾燥も防げるため、口の中が潤い清潔に保たれます。
そのため、細菌が発生しにくくなり、口臭予防につながるのです。
●「口臭予防」舌の奥を鍛える舌筋トレーニング
【方法】
1.背筋を伸ばし、斜め45度上を向いて口をあける
2.口を3センチ程開く
3.口の中で舌を、「上前歯の裏」→「下前歯の裏」→「右下奥歯」→「左下奥歯」の順に触れるようにリズミカルに動かす
口を閉じないように、この動作を3分くらい動かしつづけます。
1日に、2~3回行うとより効果的です。
つづいて、口臭予防にさらに効果的な、唾液分泌を促すストレッチも合わせてご紹介します。
●「口臭予防」唾液分泌を促すストレッチ
背筋を伸ばして、大きく息を吸い込み、1~2分「レロレロレロ…」といってみましょう。
このとき、「レ」の発音では、唇を横に引き伸ばすように意識し、「ロ」の発音では口をすぼめるように意識します。
声を出せない場所では、口の形だけでもかまいません。
このように、口臭対策では、唾液の分泌を促すための「舌の奥の筋肉を鍛えるトレーニング」と「口内ストレッチ」で、しっかり予防しましょう。
イビキは不調を招きかねない!イビキ改善のための舌筋トレーニング
舌の筋肉が緩み衰えると、寝ている時、舌が咽頭方向に落ち込み、気道をふさいでしまうため、イビキがひどくなります。
イビキは周りにも迷惑をかけますし、発展すると無呼吸症候群となり、寝ても疲れが取れないなど身体の不調にもつながるので改善が不可欠です。
イビキを改善するためには、舌が気道に落ち込まないよう、舌全体の筋肉を鍛える必要があります。
●「イビキ改善」舌筋トレーニング
1.椅子に浅めに腰掛け、背筋を伸ばす
2.口を大きく開け「あいうえお」と発声しウォーミングアップする
3.舌が上あごにしっかりつくように、「ラララララ…」と発声する
これを50回ほど行ってみましょう。
初めは疲れますが、それは舌の筋肉が衰えている証です。
毎日鍛えることで徐々に慣れ、簡単に行えるようになります。
イビキ改善のためにも、毎日のトレーニングを頑張りましょう。
このように、舌の筋肉を鍛える方法には、その目的によってさまざまなトレーニング法があります。
基本となる「あいうべ体操」と合わせて、改善させたい症状に合ったトレーニングを実行してみましょう!
舌の筋肉を鍛えて、様々な効果を体感しよう!
舌の筋肉を鍛えると、様々な効果が期待できます。
滑舌が良くなり、日常でのコミュニケーションの場で効果を発揮するだけでなく、美容や身体の健康にも大きな効果をもたらします。
人間が生きる上で欠かせない「飲食」がスムーズに行えるのも、「舌」のおかげなのです。
身体の不調は筋肉の衰えから起こります。
「舌」も身体の大切な一部として、他の筋肉と同じようにしっかり鍛えておきましょう。