石鹸は食べることはできません。
その理由をご存知でしょうか?
石鹸は界面活性剤、香料、防腐剤、酸化防止剤などさまざまな成分からなっています。
この記事では、「石鹸がなぜ私たちにとって害になり得るのか?」ということについて、各種成分の特徴からご紹介していきます。
石鹸を食べるとなぜ害がある?
身体や顔などを洗う用途で使われる石鹸。
わたしたちの衛生的な暮らしには欠かすことのできないものですよね。
石鹸は食べることができないものであることはみなさんもご存知かと思います。
死に至らしめるほどの害はないのですが、石鹸を食べると、吐き気を感じて、嘔吐、腹痛などの症状が現れます。
では、なぜ石鹸を食べることができないのでしょうか?
わたしたちの身体は「細胞」の塊でできています。
石鹸は細胞を破壊、溶解する性質を持っています。
皮膚の場合だと、角質というバリアによって覆われているので、少々石鹸にふれるくらいでは、内部にある細胞は死にません。
しかし、胃や腸などでは角質の層ではなく、粘膜によって覆われています。
石鹸は粘膜を溶かし、細胞にダメージを与えます。
そのため、皮膚では大丈夫でも、食べると症状が出やすいのです。
食べると害になるメカニズムに迫る前に〜石鹸の定義〜
石鹸を食べると害になるメカニズムに迫る前に、まずは、石鹸の定義についてご説明します。
国際的には、身体に対して用いる洗剤全般を「石鹸」=soapと呼ぶ場合がほとんどです。
実際、国際貿易の国際間の取り決め(Harmonized System)でも「soapは石鹸の成分として脂肪酸塩を含む含まないを問わない」とあります。
日本国内においても、人の身体に用いる洗剤について薬事法が適用されていて、石鹸の成分による分類はありません。
ただし、人の身体以外の家庭用のものを洗うことを目的とした製品(食器用洗剤や洗濯用洗剤など)については、配合されている界面活性剤のタイプなどで厳格に区分されています。
一方で、慣例的に「石鹸は脂肪酸と水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムが反応してできる脂肪酸ナトリウムまたは脂肪酸カリウムを主成分とする洗剤の一種」としている場合も多く見受けられます。
この記事では、法的な分類ではなく、慣例的な分類に従って、石鹸を「身体に使う脂肪酸ナトリウムまたは脂肪酸カリウムを含む洗剤」として話を進めていきます。
石鹸を食べると害がある!?界面活性剤の働きとは?
先ほどの項では石鹸は脂肪酸と塩からなる界面活性剤を含む洗剤であるというお話をしました。
ここでは、界面活性剤が何かということからご説明します。
水と油が相性がよくなくて、混じり合うことがないということは皆さんもご存知かと思います。
人間関係でも相性が合わないたとえとして「あの人と君は水と油の関係のようですね」などといったりしますよね。
界面活性剤は、この「相性が悪い水と油」が混ざりあうことを可能にします。
そもそも身体の汚れとは、汗や皮脂など身体の内側から出てくるものと、ちりや埃、泥や細菌など身体の外側から付着するものがあります。
これらのうち、皮脂、チリ、埃など汚れの多くは脂溶性分子です。
また、細菌はリン脂質膜やリポポリサッカライドと呼ばれる膜で覆われています。
皮膚の表面は皮脂と呼ばれる油の膜でできていますので、油同士で相性が良く、脂溶性の汚れは皮膚にくっつきます。
そして、これらの汚れは水に溶け込まないので水洗いではなかなか洗い流すことができません。
そこで界面活性剤を使うことで、皮膚表面の脂溶性分子を取り込み、洗い流すことができるのです。
ところで、私たちを構成する細胞は脂溶性の膜で覆われていることはご存知でしょうか?
そのため、この界面活性剤は汚れだけではなく、細胞の膜も溶かしてしまうという性質をもっています。
そのため、石鹸を食べると、胃などの消化器官の細胞が次々と破壊されてしまいます。
結果として、吐き気や嘔吐、腹痛などの害となって症状が現れるのです。
石鹸の添加物〜酸化防止剤を食べると害がある?〜
石鹸には界面活性剤以外にもさまざまな添加物が含まれていることがあります。
例えば、酸化防止剤や防腐剤、抗菌物質です。
これらの成分について、その毒性について見ていきましょう。
まずは、酸化防止剤です。
石鹸に含まれる脂肪酸は酸化しやすいという特徴を持っています。
日光が当たると脂肪酸は酸化します。
空気に触れることでも酸化は進みます。
また、原料に銅、鉄、クロム、マンガンなどが入っていると石鹸はそのままでは酸化してしまいます。
そのため、市販の石鹸には酸化防止剤が入っています。
酸化防止剤として使われる物質としては、ビタミンEやクエン酸など、普段私たちが食べる物に含まれている成分が挙げられます。
また、エデト酸塩やエチドロン酸塩もよく使われます。
これらの成分は、キレーターとも呼ばれ、銅、鉄、クロム、マンガンなどの金属と結合しその酸化作用を抑える働きがあります。
エデト酸塩やエチドロン酸塩も大量に食べると人体には毒ですが、石鹸に酸化防止剤目的で入っている量は微量です。
総じて、石鹸に含まれる酸化防止剤は人体には害は少ないといえます。
石鹸の添加物〜防腐剤と抗菌成分を食べると害がある?〜
次に、防腐剤と抗菌成分についてご説明します。
石鹸は、脂肪酸を含む有機物です。
細菌やカビの仲間には石鹸の有機物を食べることで生育できるものもいます。
そのため、市販の石鹸には、細菌やカビの増殖を抑えるために、防腐剤や抗菌物質が入っています。
防腐剤としてよく用いられるのが、パラベン類(メチルパラベンやエチルパラベンなど)です。
パラベン類は広い範囲の細菌やカビに対して殺菌作用を発揮します。
その一方で、これらの分子は細胞にとって有害な活性酸素を作り出す分子でもあります。
したがって、石鹸を食べると防腐剤の悪影響が生じる可能性があります。
また、除菌、感染症予防の目的で、「抗菌石鹸」と呼ばれるタイプの薬用石鹸も市販されています。
抗菌成分としてよく用いられるのが、トリクロサンおよびトリクロカルバンです。
人体へ直接接害を及ぼす可能性が指摘されています。
トリクロサンはいわゆる環境ホルモンです。
ホルモンの働きを撹乱する作用を持つことが研究でわかっています。
このように、防腐剤と抗菌成分は人体に害がある成分といえるでしょう。
石鹸の選び方
石鹸の中には添加物が入っていない無添加石鹸があります。
石鹸の人体への害が気になる人は、無添加石鹸を選ぶと良いでしょう。
無添加石鹸は、ここでお話しした毒性のある成分以外にも刺激の強い成分を含まないため、肌への負担が少ないのでオススメです。
しかし、無添加石鹸であっても、食べることはできません。
無添加であっても、あくまでも身体を洗うための洗剤で、界面活性剤が含まれているということを認識しておきましょう。
無添加石鹸の選び方ですが、純石鹸分98%以上、あるいは、脂肪酸ナトリウム(カリウム)98%以上と書かれている石鹸は、添加物がほとんど入っていない石鹸といえます。
また、防腐剤が入っていないような商品を利用する場合は、使用期限を守り、使用後にしっかり乾燥させるなどして、カビや細菌が増殖しないようにしましょう。
石鹸の成分を理解して、身体にあった石鹸選びを!
いかがでいたでしょうか?
この記事では、石鹸に含まれる成分についてその毒性などについてご紹介しました。
普段使いの石鹸を購入する際に、食べることのできない成分がどれくらい入っているのかを確認して、より安全で清潔な暮らしを目指してみてはいかがでしょうか?